2013/08/21

それは4月1日のお話


東京は渋谷
2013年4月1日


エイプリルフールではあるが、今日は月曜日
夜も更ければ人は少ないだろう

不景気だから、とは言うが実際は違うさ
つまんねぇからなんだ


駅から少し離れた消防署のある通り
消防署の少し先の地下


CHATTER BOXがワンマンショー『It's All Lie!?』をブチかまして
会場は最高の盛り上がりを見せていた


シャンパンのボトルが手から手へ渡されていく
初対面の人もそこに混ざっている

元々どっかの国での乾杯の由来では
『死ぬ時は一緒だ』みたいな意味が含まれていた

もし、毒入りの酒を飲んでたとしても死ぬ時は一緒らしい





















メキシコのどっかでは
殺し合いに発展している間柄であったとしても
飲食店では(街に根付いているバルや居酒屋のような)乾杯して
サルサが演奏されたなら、手をとって踊る事すら有り得るという


カウンターではバーテンダーが何やら人数を数えながらショットグラスを並べ始めた
カウンターの周りにいる人数より明らかに多いグラスの数

テキーラの空襲が渋谷を襲う
南米の暑い大地のサルサが鼓舞する































懐かしい顔ぶれや、いつもの面子
気まぐれでろくでもない俺達も今日ばっかりは、やっぱいい顔してやがる


何を成功とするのか、彼等にはわかっているのだろうか
勝ち負けや優劣の会話を繰り返しているが、
勝ち続けたならどこへ行って
負け続けたならどこへ行くんだろうか


以前は輪の中にいて、さんざんからかわれていた男が
今日という日に、何だかソワソワとしている

以前常駐していた場所が無くなり、せっかくの再会の場だというのに
彼は何かに気を使いながらも平成を装っているようだった


何人かはわかっているようだったし
勿論、僕もわかっていたが

普段ならそれぞれの事だろうと放っておくかもしれなかったが
今日は違う、誰もが最高の空間にすべく能動的だった

僕がこっちに来るように呼んだ
フロアのバーカウンター側の真ん中のテーブルへ呼んで聞いた

『どうなんだよ?』
『楽しいですよ!』
『そうじゃねぇよ』
『はい、、、。』

彼はその常駐してる店に初めて来たのも一緒だった旧友と仲違いしていた
絶縁すらほのめかされていた
というよりは、一方的に避けられていた

事の重みは相当だったらしく、半年以上もまともに顔も合わせていないんだという

その相手の彼も同じ場にいたが、彼の方は持ち前の社交性と立ち振る舞いで
誰にも何も悟られず、自由に過ごしていた

そこへ僕の仲間の2人が近付いて来た
1人が言った
『俺等が今、バァーッてやって終わらせんのは簡単なんだよ』
『そうだな』

するともう一人が黙ってソイツの肩を抱いてカウンターへ連れて行った

何やら会話の切り口を提供してやったらしかったが
どうやらダメだったみたいだ


シャンパンの空く音と、気の利いたブラックミュージックの中で
自由に踊るこのパーティーでは、誰もが身の危険を忘れ去る
































そのまま時間は過ぎて行った


僕はグルグルと色んな人と話してテキーラを散々煽った

仲違いしている2人とも飲んだが
2人とも少し腰が引けていた


しばらくして、場も落ち着き始めた頃
カウンターの方へ目をやると、その2人が少し距離を置いてカウンターに寄りかかっていた


避けられている方がさりげなく近付いて
『お疲れ、乾杯しようよ』
と言って、グラスを突き出した


返事は無く、顔すらそちらに向けていなかった

ここで引くかと思ったが、珍しくももう一度
『乾杯しようぜ』と言った


すると、彼は顔を向けないままこう言った

『お前、お前と乾杯するんならテキーラでしか乾杯できねぇだろ!』


さっきまで無数のショットグラスが並んでたカウンターに
たった2つだけショットグラスが置かれ
2人は世界で最も美しいテキーラを飲んだ


























渋谷の真夜中、ファイヤーストリート
あれから4ヶ月余り
2013年9月20日の夜

CHATTE BOX Presents One Man SHOW
『GOOD BYE TEQUILA』

世界で最も美しい金色のテキーラが飛び交う夜

皆様のご来場をお待ちしております